『髑髏城の七人 鳥』 舞台 歌えや踊れ
4月に観た『髑髏城の七人』のアナザーバージョン。
主役の捨之介は、阿部サダヲ。
無界屋蘭兵衛には早乙女太一、天魔王に森山未來、極楽太夫に松雪泰子がそれぞれキャスティングされている。
古田新太や小栗旬の着流しイメージから一変した阿部サダヲが良い味を出していた。
花バージョンに対して細かな役どころの変更などあったが、何より大きな違いは、歌と踊りの扱いだ。
やたらと歌って踊ってた。
松雪なんて何曲歌ってんだ?
MIKIKOの振り付けが、踊りの売りの一つになっていて極楽太夫と遊女たちの踊りは確かに今までの新感線らしくない、可愛らしくてセクシーなダンスシーンになっていた。
この歌と踊りが表しているように鳥バージョンは、今までの髑髏城や花バージョンに比べて、娯楽色、エンタメ色が強くなっている。
好きずきが分かれるだろう部分だ。
私にはちょっとがちゃがちゃすぎているように感じた。
特に、早乙女太一の殺陣があまりにも美しいだけに、このがちゃがちゃ感とのギャプがもったいなく感じた。
早乙女と森山の殺陣は、それぞれの出自がよくあらわている舞台でしか堪能できない美しさなだけに、もっとシリアスな展開の中で観たかった。
本当に綺麗なんだよ、二人の動きが。延々と続けて欲しい殺陣で、髑髏城史上一二を争う名場面だと思う。
360シアターの使い方は花よりも小慣れていたが、その分驚きが減ったのも正直な所だ。流れる川や広がる平原など、凄いんだけど、前回との違いが見つけられなかった。これは目が慣れたリピーターにはしょうがないといえばしょうがない事なんだけど、新しい驚きを感じたかった。
ただ、ここまで書いて鳥バージョンがダメだったかというと、娯楽作として髑髏城の世界が広がったのは素直に嬉しい。新感線のエンタメ部分を拡大していけば、シリアスな芝居も場合によってはここまで柔らかく仕立てられるってのは面白かった。
少なくとも4バージョン全てを観ようと考えているファンにとっては、それぞれの個性が立っている事は必要だし、劇団がどんな形で違いを見せてくれるのかは観劇の重要なポイントの一つだから。
次の風バージョンは、久々の捨之介と天魔王の一人二役バージョンで、古田新太の演じた過去の髑髏城に対して松ケンがどんな演技で見せてくれるか楽しみだ。
最後の月バージョンは、ダブルキャストまでは公表されていて先行の予約が始まっているが、キャストではなくスタッフを見ると、どうも新感線のもう一つの路線ロック歌舞伎になるんじゃないかと想像している。
舞台そのものを楽しむのとはまた異なった楽しみ方だが、この特殊な劇場のこけら落とし公演のロングランなら、こうした楽しみもまたありだ。