『機巧のイヴ 』 乾 緑郎 本 読書メーター

機巧のイヴ (新潮文庫)

機巧のイヴ (新潮文庫)

 

日本版スチームパンクとして抜群の面白さ。江戸のパラレルワールド天府を舞台に、機巧人形と人を隔てるものは何なのかを問いかける。創造できるからこそ造ってしまう人工の生命に宿る感情、命はどこから産まれるのか。脳という臓器をいっさい排除することで力業的な世界が構築されているが、物語に触れている間は気になるものではなかった。一人の男と機巧人形の愛憎話から、社会の根幹に広がる謎にまで広がっていく物語は魅力的だ。なにより妖艶でありながらお茶目なオートマタ伊武の魅力には敵わない。時代SFエンタメ小説、お試しあれ。