『漁港の肉子ちゃん』 西 加奈子 本 読書メーター

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

 

 甘い匂いのする、柔らかくて暖かいものに、優しく包み込まれて時を過ごせるのなら、駄目になっても構わない。男の悲しいファンタジーだ。タイトルと表紙絵から「肉子」に勝手なエロい妄想をしていた。実際に、必ずしも外れな訳ではなかったが、性的なモノが排除された健気な世界、柔らかくて無垢な女性の存在が語り部の娘や港町の人々に優しい影響を与えていく母娘の物語という内容は真逆のもので、穏やかな気持ちになれる作品だった。けれど、決して負け惜しみではなく、性的な意味でも癒しを与える肉子さんな、お話を読んでみたかった。