『鯨の王』  藤崎 慎吾 本 読書メーター

鯨の王 (文春文庫)

鯨の王 (文春文庫)

 

 深海は浪漫だ。地上なら10分程度歩けば到着する距離が、海の深さに変わるだけで人の住む世界から遠く離れたモノになる。何が存在するの未明の暗黒の世界を想像するだけでも身が震える。そんな世界を舞台に新種の巨大鯨と人間が対峙する物語が、退屈になるわけがない。潜水艦での謎の事故から始まり、深海の恐怖と浪漫、鯨に魅せられた人の有り様、巨大鯨と人の対決が、縦横無尽に絡み合って興奮のうちにクライマックスを迎える。光届かぬ暗黒の中、隊列を組む巨大鯨と最新鋭潜水艦が闘志を剥き出しに向き合う姿が、男の子心を擽らない訳がない。