『慈しむ男』  荒井 曜 本 読書メーター

事件カメラマン天羽眞理子 慈しむ男 (角川文庫)

事件カメラマン天羽眞理子 慈しむ男 (角川文庫)

 

今時のコインロッカーベイビーは、コウノトリポストから産まれた。赤ちゃんのぺニスを咥え薄荷煙草みたいだと感じた母親は、無抵抗な存在に嗜虐的な行為を行う存在になっていた。望まれず産まれた存在が、祝祭で日常を無秩序に陥れ破壊しようとする物語は、嫌いじゃない。むしろ共感を抱く。冒頭の東京タワー破壊には度肝を抜かれ、落ちてくる子供の残酷な美しさには震えたが、私の中の破滅への意志が共振できなかった。過剰と蕩尽の本質があと一歩突き抜けてこなかった。小説賞の大賞で受賞作らしい野心と荒削りな力に溢れた作品だ。