『夜空の呪いに色はない』 河野 裕 本 読書メーター

夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)

夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)

 

 このお話が、捨てられた者たちによって紡がれていることに改めて心が痛くなった。捨てた側の者たちも登場するが、彼らは彼らで真摯に生きているだけに、そんな彼らから捨てられた主人公たちが真摯に生きていく姿は凛々しくあると同時に痛々しい。一つひとつの思いや考えを丁寧に言葉にしていく、もしくは言葉にできない事柄の形を表現していく、作者の文章には、毎回心打たれる。生きていく事の責任、歳を重ねる事の重さをしっかりと受け止める七草、真辺たちはもちろん、それ以外の全ての登場人物が愛しくて仕方ない。