『鳩の撃退法』上・下 佐藤 正午 本 読書メーター

鳩の撃退法 上 (小学館文庫)

鳩の撃退法 上 (小学館文庫)

 

 なんとも不可思議な手触りの物語。信頼できない話者が書き連ねる、時制や口調が入り組んだマトリョーシカのような作品。下巻でどうなる?

 

鳩の撃退法 下 (小学館文庫)

鳩の撃退法 下 (小学館文庫)

 

 最後の最後まで、不可思議な手触りのままの、読む事が愉しい小説だった。鳩の話や、ピーターパン、家族の幸せなどキチンとオチをつけるし伏線も回収するし筋は通っているのだけれど、作者を投影した作者役の登場人物やフィクション内の虚実の関係などメタな構造や時制のシャッフルによる混乱や暗喩隠喩の飄々とした表現も含め、ストーリーでなく、小説を読んでいる時間を楽しむ、読書そのものが気持ちよくなる作品だ。作者の騙りを、読み手としてリアクションしながら楽しんでいくのが最適な読み方なんじゃないだろうか。あー愉しかった。