『まるで天使のような』 マーガレット・ミラー 本 読書メーター

まるで天使のような (創元推理文庫)
 

 スカンピンで女にふられても軽口をたたきながら、飄々と勢いと口八丁で乗り切ろうとする根なし草な主人公。それだけで強く共感する。行き掛かりで調査を始めた事件で、依頼者や被害者と触れあううちに、その軽さを残しながら人の想いに応えるために変わっていく様子が独特で胸に届く。作者の夫を含む多くの先達が残したハードボイルドとは一風異なる感触が非常に心地よい。ラストの展開よりも、主人公にとっての天使との約束を行き掛かりを装いながら守り通して行く言動の肌触りが私には一番の魅力だ。