『図書館の魔女』 高田 大介 本 読書メーター

図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

 

これほど終わって欲しくない読書は、本当に久しぶりだ。言葉と智恵の力が脳を刺激する知的快楽と、アクションが呼び起こす興奮、主人公二人だけでなく全ての登場人物の人となりが産み出す幸せな爽快感等がない交ぜになった悦びをいつまでも感じ、冒険の世界に遊んでいたかった。マツリカの強くか弱く聡明で無邪気で真剣な有り様だけでもノックアウトなのに、図書館に纏わる人々の生き方が、この世界を他に替えがたい物にしている。なんて気持ちの良い連中だろう。言葉が形作った虚構の世界が、こんなにも魅力に溢れている事の不思議。読書の悦楽満喫

 

 

図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

 

智恵と言葉の持つ力が、世界を変えていく心地よさを存分に楽しめる巻。前巻までは蓄積され繋がった智そのものの快楽だったが、実勢の政治状況を智恵に裏付けられた言葉でダイナミックに動かしていく興奮に満ちていた。もちろん口先だけでなく行動する力があっての話だが、マツリカの発する言葉が全てを動かしていく様にワクワクせずにはいられない。言葉は文字や音声だけでなく、想いを持つコミュニケーション全てである事も心を刺激する。マツリカを苦しめる行為もまた、文字や音声でない言葉たと言うのも憎い所だ。大興奮必至の傑作。本好き必読。

 

図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

 

 普通の人が当たり前に持つ何かを欠いていると同時に、特異な才を持つマツリカとキリヒトの二人。自ら望んだ訳ではない過酷な役割を全うしなければならない運命を受け入れながら、それでもなお、互いに相手が「当たり前」な生活を送れる事を心から望む想いに涙する。言葉を武器に深謀遠慮な政争を鮮やかに采配し乗り越える姿や、不死身の存在を徹底的に退治する姿が、鮮やかであればあるほど、彼女らの細やかで優しい祈りのような想いが、叶わぬ希望である事を突きつけられる。マツリカがキリヒトに伝えた言葉は、願わずにいられない切実な希望だ。

 

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

 

 主人公二人の井戸を巡る探求の冒険が、そのまま知識を深め活用する事の喜びを現している。小さな事象から、点と点を結び、線と線が面になり、さらに思考を深める事で高さと奥行きを生んでいくワクワクする興奮が伝わってくる。知識が深まり謎を通して世界が新たな様相を見せるそのプロセスは、ミステリーの醍醐味、快感とも相似だ。始まりの一巻から本を読む事、知識を深める事の楽しさを巧みな言葉で繰り広げられたら続く世界へと身を委ねるしかない。 口聞けぬ少女と言葉を読めない少年が、二人だけの言語で饒舌に語り合う様子もまた楽しい。