『青春と変態』 会田 誠 本 読書メーター

青春と変態 (ちくま文庫)

青春と変態 (ちくま文庫)

 

 「変態」とはなんて爽やかなものだろう。「青春」なとはなんて残酷なものだろう。芸術家らしい確かな観察眼と緻密な表現力でスリリングに描写される前半の行為のドギツサは、文学すらも軽く超越した芸術的な詩作だ。もちろん一般的には嫌悪を催す内容で誰にも薦められるものではないけれど、その裏側にある繊細で初々しい感性と思考は、まさしく青春以外の何物でもない。後半に至っての青春成分大盛りの展開には、逆に偏執的な変態が横たわるからこそ、爽やかな感動と涙を与えてくれる。複雑怪奇だからこそ愛しい魂の叫びがここにある。

 

余談。「変態」にも微細に分かれた嗜好があり、それぞれが認めあえる物ではない。私の「変態」成分は、主人公の「変態」を気持ち悪いと思う。それでもその行為に没頭せざるを得ない衝動は共通のもので、脳の中で渦巻く言葉の数々は、そのまま自分のものだ。会田君は私だ!とユリイカと叫んだ哲学者のように叫びたい。もちろん神に誓って、覗きになどした事はない。勘違いしないように。 道端で拾った投稿雑誌がきっかけになったように、私は古本屋で出会った一冊が嗜好の光を与えてくれた。運命的な出会いこそが、人を希望へ導いてくれるのだ。

 

孤独な惑星―会田誠作品集

孤独な惑星―会田誠作品集