『破滅の王』 上田 早夕里 本 読書メーター

破滅の王

破滅の王

 

 科学や成果物そのものは善でも悪でもない。どう扱うかを決める人間が、意味を産むだけだ。科学者は倫理だけではなく、人としての心情や想いまでも問われる。戦時下と言う特殊な時間にだけでなく、今ここでも常に突き付けられている。程度の差こそあれそれは我々にも突き付けられている刃だ。その行いは、真摯に物事に向き合った結果なのか、「常識」に阿っただけではないのか‥。宮本や灰塚に共感できるのは、そうした問いへの夫々の応えか真摯な物だからだ。同じ様に真須木の想いを否定しきれないのは、私の中に共鳴する絶望的な諦観があるからだ。