『ガラパゴス 上・下』 相場 英雄 本 読書メーター

ガラパゴス 上 (上) (小学館文庫)

ガラパゴス 上 (上) (小学館文庫)

 
ガラパゴス 下 (下) (小学館文庫)

ガラパゴス 下 (下) (小学館文庫)

 

 

震える牛』に痺れたのは、食肉業界と言う禁忌に正面から向き合い物語を構築していたからだ。今作もタイトル『ガラパゴス』から製造業のタブーに斬り込んでいく物語を期待していたが、良い意味で想像を裏切られた。企業の利益追順が生んだ悲劇の話だった。事件を追う中で浮かび上がってくる日本の労働環境の闇は、既に知る光景で、タブーに斬り込む鋭さは劣るが、主人公が被害者の身上を探求していく中で露になる、残酷な環境の中でも凛とした彼の生き方と主人公の無念な怒りが胸に突き刺さる。いつの間に世界は非道が当たり前なっていたんだろう。