『コンビニ人間』 村田 沙耶香 本 読書メーター

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 村田クレイジー沙耶香が、日常にまで侵食してきやがった。彼女は、性や性器、生殖や欲望に真っ向から向き合い、「常識」と言う心地の良い幻想を根底から揺さぶって読者に凶的で恐的な真実を突きつけてきた。今回は、コンビニと言う日常とは切り離せない世界を背景に、ごく当たり前の「普通」の薄気味悪い本来の姿を淡々と描いている。マニュアル通りに店員を全うする主人公と、「常識」通りに反応する登場人物や私たちとの間には差異はない、もちろん貴賤も上下も。主人公に感じる嫌悪や違和は、自分自身への鏡だ。これぞ読書のスリリングな体験だ。