『聖なる侵入 (1982年) (サンリオSF文庫) 』 フィリップ・K・ディック 本 読書メーター

聖なる侵入 (1982年) (サンリオSF文庫)

聖なる侵入 (1982年) (サンリオSF文庫)

 

 ディックの真髄を堪能。目の前にある現実が虚構なのではないか?人らしさとは?人工物と自然物を分ける何かがあるのか?等を経て、同時にドラッグと悪女によって狂い多くの友を失っていった人生の先にたどり着いた神学。満身創痍ながら真摯に書き続け得た物は、単なる俗なる宗教ではなく、神と呼ばれ崇められる者への燃えるような問いだ。混沌としたヴァリスも良いが、物語として纏めあげたこちらの作品の方がより私には響いてくる。善なるはずの者の救いが顕れない世界はいつまでも続いている。だから、ディックは今でもここに生きていると感じる。

 

30年ぶりに再読。卒論で繰り返し読んだのが懐かしい。 サンリオ文庫廃刊の後、創元推理文庫、ハヤカワの新訳と続いたが、やっぱりサンリオが一番しっくりくる。 一ミリも色褪せない内容なのが凄い。