『キマイラの新しい城』 殊能将之

ハサミ男インパクトを期待し続けて新作を追いかけているが、彼の方向は別のもののようで、なかなか期待を超えて楽しませてくれる作品に出会えない。この作品も750年前のフランスでの殺人事件の謎を現代の千葉の古城の中で解明する、と言う設定だけ見ればかなり期待できそうなものだったが、俺にはどうでも良かった。ただの謎解きミステリーが読みたい訳でも無いし、パズラーや本格を期待している訳ではないので余計にこういう作品は、インパクトが薄くてつらい。途中から『黒い仏』のような大きな衝撃があるのではと思ったが、そういう志向の作品でもなく、上手に纏まったねってな感じだった。
設定に萠えたり、キャラクターに萠えるような内輪だけで通じる世界はいらない。全ても文字作品の中で、勝負するような筋が通って、志熱く力を持った挑戦的なミステリー、小説が読みたい。
残念。