「M:i:3 ミッション・インポッシブル3」

シリーズ最新作。面白かった。「スパイ大作戦」のリメイクとはしては、三作品中ベストだと思う。1は、デパルマの見せる構図と、ミステリー風味のアクション映画として面白かったけれど、主役のトム・クルーズのスーパースパイの映画だった。もちろん007ボンドの大人の童話とは違う、(ある程度の)リアルに根ざしたスパイ映画だったけれど。3もトム様映画であることは否めないが、それでもスパイ大作戦の真髄、チームワークで実行不可能なミッションをクリアしていくと言う点が一番よく描かれていた。
ハリウッドスタジオ制作の映画だから、大掛かりなアクションやシンプルなキャラクター造形はしょうがない。逆にその辺り、も含めて良質なエンターテインメントをしっかりと目指し、同時に集団スパイものの娯楽作品としてのクオリティを落としていない。始まりから一挙に引き込まれ、最後まで一気に映画に引き込まれる。ローマでのミッションなんて、大掛かりで派手すぎてスパイとしては目立ち過ぎるけれど、娯楽映画としては、最高の興奮ものだ。007のボンドのように子供だましなギミックや小道具ではなく、(ハリウッド的ではあるけれど)リアルなツールを使って人の力でミッションをこなしていく。小学生みたいに手に汗握ってスクリーンを見ていたよ。
テーマがどうこうはない。人生に影響なんてあたえない。割り切った娯楽映画なのだから、それで良い。その上でエンターテインメントであり、原作のスパイ大作戦のチームワークにこだわり、荒唐無稽でない悪役を設定した、この3は最高だ。残念ながら1ではこの悪役が設定できなかったために、自分達の業界の中での謎解きに始終する話になってしまっていた。そこでミステリーを作った手腕は凄いし、ミッションの緊張感はぴか一だ。それでも、魅力的な悪役がいなかったのは辛い。2はどうでも良い。あの悪役は中途半端だ。チャーリーズエンジェルの悪役と区別が付かない。あれはジョン・ウーの俺様映画のための、単なる書き割りの役割だ。
この3が、意外と評判が悪いのが残念だ。いいじゃない重要なアイテムが何なのか説明が無くても。上海のビルの中で何があったか描かなくても。この二つは、物語の本筋とは一切関わりが無いんだから。ビルの中の描写は、ミッションクリアのチームワークを見たかったのは事実だけれど、あそこはぐだぐだ描くところじゃないし。シーモア奪還の橋の上でのアクションなんて、次々とカットで繋いでいって画で見せていく迫力は、スクリーンから目が離せない。アクションの魅力は、ヘリコプターのシーンにも満載で、寄りのカットが多いかと思うと、すっと引きでアクションのメリハリを付ける。テレビ的なアップショットの多様が気になるけれど、前二作とは違うアクション映画としての質は高いと思う。
ただ、この映画のラストシーンは気に入らない。チームで締めくくるのは、良いと思う。でもあのシーンはまるで出来損ないの恋愛映画だ。上海のシーンで、トムとフィアンセをチームが迎え入れる。それで十分だったはずだ。完成後のスクリーニングで、マーケティングかなにかの役員に無理矢理とってつけられたエンディングに見えてしょうがなかった。あそこがなければ満点だ。