「 クリーピー 」 本 前川裕 読書メーター

 

クリーピー (光文社文庫)

クリーピー (光文社文庫)

 

 タイトル通りの気味の悪さが、物語全体を覆っている。ショッキングな描写などが無いのにぞわぞわする前半の薄気味の悪さは、強烈な印象を与え続ける。黒沢清監督が映画化したのも肯ける。後半は、手触りの異なるクリーピーさが姿を現し、背景にある静かな狂気に背筋が寒くなる。淡々と言葉が続くので気が付きにくいが、状況を語る登場人物たちが送る日常を想像すると、その状況にゾットする。思わず周りを見回し、誰もが普通に見えるが、その裏に潜んでいるかもしれない狂気を見分ける事ができない事実に気づき、世界が恐ろしい場所に豹変する。