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『パッセンジャー』 映画 愛は罪を軽々と超えるなんて、さすがハリウッド

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冬眠を使用し120年をかけて植民星に向かう恒星間宇宙船の中で、偶然冬眠から目覚めた男。目的地まで90年もの期間を残し宇宙船に閉じ込められることになった。

 

宇宙船に閉じ込められた男女がどうやってサバイブするのか、予告編を観てとても気になっていた。アダムとイブの物語と「オデュッセイア」の物語を、CGを駆使したヴィジュアルでスクリーン上に展開するハードSFだと勝手に想像していた。

 

良くも悪くも裏切られた。

 

急に無重力になったプールの水で人が溺れるシーンの迫力や、清潔で機能的だからこそ空虚な孤独がさらに強く感じられてしまうモールの様子、船内のプロダクトデザインの数々など、ヴィジュアル面はとても良くできていた。

想定外の大きさの隕石との衝突で偶然に故障してしまったカプセルの冬眠から、強制的に目覚まされてしまった人の孤独という設定は、本当に面白いと思った。

どうやって生き延び、どうやって90年を残した航海の物語を進めていくのかと、始まりはワクワクと期待が高まった。

ほぼ4人しか登場しないために、存在感の高さや魅せる力が問われる役者も、十分すぎるくらいの存在感のある演技だった。

誰もが認めるように、ウェイターロボットのマイケル・シーンが素晴らしい。

ちなみにアンディ・ガルシアも出演しているが、ほん数カットだけの引きの絵の中での登場で、気がつく人がいるのだろうか、彼である意味があるんだろうか。

 

 それはさておき、最後まで観終わると残ったのは、中途半端だったなと言う感触だ。

 

それがハリウッドが世界に送るブロックバスター映画なんだよと言ってしまえばそれまでなんだけど...

 

絶望的な孤独に心を蝕まれながらも死ぬ事もできず、狂気の手前まで行った男が、妄想ともとれる理想の女性を見つけ冬眠から目覚めさせてしまう。

自己の生存のため、明示はされないが人としての欲望の対象として異性を、自分と同様の地獄に引きづり込んでしまう。目覚めさせる事が地獄での(ゆるやかな)死になるなんて、魅力的な設定じゃないか。

男の罪と女の憎悪と許し。その後二人はどうやって生きて行くのか。罪を自覚する男の有り様など、しっかりと思考して深めていけば、とても興味深い内容になるだろうテーマだ。

それが、いつの間にか映画的スペクタクルの危機に物語はシフトし、危機の克服が罪の許しになっていくと言うなんとも安易な展開になってしまう。

ジェニファー・ローレンスに、あの表情で"Come back to me"なんて言われたらうるるとはしてしまうし、ドラマを感じてしまうが、せっかくの可能性が広がらなかったのがなんとも惜しい。

 

映像の精度が高く、しっかりとした演出で、このあたりのクライシスも観ている間は満足するのだが、終わってみれば全てがさらりと流されてしまっていて、深く突き刺さるものもないままだ。

二人がどうやって、宇宙船の中で二人だけで暮らす人生を全うしたのか、気になる部分は観客の想像に全て任せるのもいただけない。片鱗でも良いので二人の生きて行く姿を見せた上で想像を刺激して欲しかった。

これでは、二人はこの先もただ、食べて、走って、踊って、バスケして、泳いで、セックスして、寝ての繰り返しだけで人生を終えたとしか思えない。普通じゃん。

 

役者たちの演技、ヴィジュアルの完成度の高さ、整合のとれたドラマのあるストーリー、カタルシスを得られる分かりやすい物語の終わりかた等など、鑑賞している間だけは間違いなく楽しめる。デートムービとしてもお薦めだ。

だが、なんとも中途半端で、惜しいと言う印象は拭えない。