『ケシゴムは嘘を消せない』 白河 三兎 本 読書メータ

ケシゴムは嘘を消せない (講談社文庫)

ケシゴムは嘘を消せない (講談社文庫)

 

 数多ある正論のひとつ、見えないものこそ事の本質である、てのは耳障りが良いだけの嘘で、逆に目に見える確かなものこそ信じるに値するわけでもない。見えようが見えまいが関係ない、相対している自分にとってそれがどんな意味を持って、どんなものであるのかだけが大切だ。透明女も元妻もどちらも所謂普通じゃないけど、主人公にとっては等しく真摯に向かうべき相手だ。そんな主人公の、ぐうたらな癖に正直で、我儘な女の苛つく言動に素直な心を感じ好意をもち、弱っちくてずるい癖に意地をはるような、捻くれた真っ当さにとてつもなく共感した。