『神様の裏の顔』 藤崎 翔 本 読書メーター

対する相手の数だけ、人は様々な顔を持つ。全てが本物で、すべてが偽物だ。そう考える本人の意識に対してさえも、本物であり偽物でもある。意識って面倒臭い。ましてや他人の中にある「私」の印象なんて面倒臭いの極致だろう。勝手な思い込みと、都合の良いストーリーの中で存在する「私」が、どんなものかを想像するだけでゾッとする。死んでしまった聖人君子のような元教師のイメージが彼の葬式の場で崩れていく物語は、虚構を信じていた人たちの態度の変化が滑稽で面白い。その上、人は幾つの顔を持つのかを最後まで貫く展開は、純粋に楽しい。

神様の裏の顔 (角川文庫)

神様の裏の顔 (角川文庫)