『未必のマクベス 』 早瀬 耕 本 読書メーター

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

 

 心に刻み込まれた浅い夢のような恋心は、消えることがない。消え去らない、消え去らしたくない想いを抱いた一人の男、男の子の初恋の物語に涙した。走り去っていく後ろ姿をいつまでも眺め続けていたのは、主人公なのか私なのか。放課後の校庭を走る君をいつまでも眺めていた私には区別がつかなくなる。遂げられないかららこその初恋の物語なのだから、悲劇にしかならないにしても、物語が終わる前に、互いの想いに気づけた事、言葉にできた事は幸せだ。彼の想いと行動が、燠火のように私の胸に残るものを揺さぶって、切なくて甘い涙が流れた。