『お嬢さん』 映画 浪漫あふれる変態たち 鈴の音を素直に聞けなくなりました

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『シュリ』以来に韓国映画をスクリーンで観た。

 

あらすじ:日本の統治下にあった1930年代の韓国。詐欺師たちのの手で育てられた少女スッキ(キム・タエリ)は、伯爵の呼び名を持つ詐欺師(ハ・ジョンウ)から美しい富豪令嬢・日出子(キム・ミニ)のメイドという仕事をあてがわれる。伯爵は彼女使い日出子との財産目当ての結婚をしようと企んでいた。結婚した後に日出子を精神病院に送り込んで財産を奪う計画を進める伯爵だが……。

 

覗き見の快楽を楽しんでいるうちに、綺麗に騙された。

 

日本に併合された時代の韓国を舞台に、韓国人役者たちが演じる日本人の話す微妙に奇妙な日本語が独特の空気を醸し出している。嫌いな空気じゃない。

韓国映画ではありがちな、反日の影が一切見えないのも素晴らしい。

 

春画や官能小説が大事な小道具になり、屋敷や衣装の和洋折衷の非リアリスティックな質感とあいまり、他に観たことのない深く意味ありげなヴィジュアルを醸し出していた。

演者たちの視線、表情、呼吸、全ての演技が東洋的 − イメージとしての日本的で、ハリウッド映画はもちろん、韓国映画にも邦画にもない静かで熱い淫靡なエロシチズムを感じさせる。

 

そんな中で繰り広げられる金と身体の欲望の騙し合いは、非現実的だが、この世界の中ではリアルだ。

 

女性の解放をテーマにしていると読み解くレビューアーも多いが、もうすこしシンプルに性的倒錯者同士の交錯を通して語られるのは、愛の強さだと思う。

ストレート、ゲイ、レズビアン、サディスト、マゾヒスト、フェチ、ありとあらゆる倒錯した欲望が描かれる中で勝利するのは、純粋の愛だ。

 

勝利を得た愛の交わりのなんと美しいこと。

二人の描く曲線がシンメトリーにスクリーンに投影されるシーン、軽やかに響く音の官能的で淫靡な美しさ。

騙し合いの先にあるラストシーンは、この倒錯した世界を堪能した後では、素直に正直な愛の形として受け入れらる。まあ女優二人の身体が綺麗だってだけでもあるけど。

 

エログロの覗き見的な物語を、幻惑的な舞台や小道具と役者の演技で、上品でアーティスチックな映画にまで昇華している。

 

韓国人の話す怪しい日本語や、正確性を欠く衣装や髪型にどこかひっかかってしまい、映画の内容を素直に受け入れられない人もいるだろうが、もったいない。

幻想の日本と韓国を舞台にした、倒錯した性的嗜好者のコンゲームを描いた、大人のファンタジー映画として傑作なこの映画はぜひスクリーンで楽しんで欲しい。