『凶犬の眼』 柚月裕子 本 読書メーター

凶犬の眼

凶犬の眼

 

 狼の血を引き継いだ若い野犬ともう一匹の気高い狼の話。ひりつく都市と対照的な田園風景の中で始まる物語のギャップに戸惑うが、国光の登場から男の世界が展開されていく。任侠に生きる国光の存在は懐かしい漢の姿で、燻し銀の魅力に溢れている。その分、前作の大上のような強烈さは薄い。凄みを増していくスカーフェイス日岡の変わりようも同じように静かだが、国光と兄弟の杯を交わす日岡は、大上と一ノ瀬の関係を越え新たな狼の誕生を感じさせる。男が男に惚れる。これ以上痺れる物はない。次作では狂った獣としてギラつく街で暴れて欲しい。