『汝、コンピューターの夢 (〈八世界〉全短編1)』 ジョン・ヴァーリイ 本 読書メーター

 

想像の矢の射程の長さに驚く。70年代に放たれた著者の想いとイマジネーションは充分に現代にも鋭さと優しさを失わず、読者である私の胸に届いた。表題作のVRと意識の関係は今だからこそ尚更意味を深めているし、「歌えや踊れ」のフィジカルとメンタルの脈動と融合が織り成す音楽の豊かさは永遠に人の心に響き、美しさと隠微な快楽を感じさせる。一編いっぺんが、豊かな想像力とセクシャルで開放的な肉体の悦び、生の力強さに溢れ、作品に触れている時間が嬉しいものになっていた。SFの面白さと幅広さを改めて教えてくれる傑作短編集だ。