『汚れた赤を恋と呼ぶんだ 』 河野 裕 本 読書メーター

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

 

恋と簡単に言ってしまえば済みそうな、でも実際には言葉で定義してしまうと零れ落ちてしまう、ニュアンスや多色な心象を、出来る限り丁寧に積み重ねた言葉で形にしようとする作者の姿と、文章を通して伝わってくる目に見えない物にずっと心を揺さぶられる。成長したつもりの自分は、何を捨てたのか、拾ったのか。見えないけれどある、この感触や面倒くさい感情はまだ胸に残っているのか。自分の胸の奥を覗くような読書は嫌いじゃない。表と裏の二人が、それぞれを受け入れ、それぞれの距離で先に進む結末は素敵だ。私にはこれでシリーズ終了で良い。