『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち 』 仁木 稔 本 読書メーター

 

 ヒストリアシリーズに繋がる「絶対平和」時代を舞台にした前日譚。三編の長編からなるシリーズと共通の暴力、免疫=自己と他者の境界、性が直接的な言葉で語られていく。人の根幹にあるものを隠すことなく取り出す言葉たちは、カオスの荒々しさをそのまま体現するかのように享楽的で凶暴で禍々しい。平和を希求する人間は、同時に底のない欲望の塊で、建前や理想を装い成立する社会は、暴虐な人間の性を消失させることはできない。絶望的なはずなのに、それこそが希望に覚えてくるこの不思議な感触が、この作品の一番の魅力だ。

 

 

 

グアルディア (SFシリーズ・Jコレクション)

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ミカイールの階梯〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
 
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ラ・イストリア (ハヤカワ文庫JA)

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