『針』 浅暮三文

おもしれぇ。早川のSFシリーズで、感覚シリーズを書いたって事で期待していたものとは、まるで違う作品になっていた。
『カニスの血を繼ぐ』や『石の中の蜘蛛』のようなオリジナリティの高いミステリーなのか、それとも『左目を失った男』のようなテイストのSFかと思っていたら、まさか痴漢小説だとは!
裏切られた!嬉しい!
もう電車の中で読むのも恥ずかしいくらいに、細かく描写された痴漢の心理は、すばらしい!ついつい俺もしたくなる。
特殊なウイルスのせいで、ずぬけて敏感になった触覚。その触覚が求める快楽。冷静になってみれば、こういう展開しかないと言うほどの内容だ。
最後には特殊な触覚じゃなくても、通常のセックスで感じる感覚とどこが違うのと言う気分になるのが、くせものだ。ここまで細かく味わう事なんて、そうあるもんじゃない。
この本を読み終えた後のセックスでは、主人公のような心持ちで触っちゃうんだろうな。ヤバイ・・・。
とりあえず、真剣に書かれたエロ小説。愉しい時間を持てる。
肩の力を抜いて愉しむ事をお奨めする。

■ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション 『針』