『1Q84 Book1 Book2』

村上と言えば、龍な俺も、この本は面白かった。
文学とエンターテイメントの境目なんて意味ないけど、エンターテイメントの物語として、今を提示する小説の力を感じることができた。
オウム、ヤマギシ会、システムとか分かりやすい設定もあるが、この話は、現実と書かれた世界の関係、一切登場しないがネットに言葉が溢れる今をどう生きるか、強くは明示できないが薄く儚いながらも持つであろう意思の物語だ。虚構の世界に書かれた自分と、自分の記憶から続く自分、今自分が感じている自分、他者から規定される自分、システムに規定される自分、その全てを身をもって引受け、明確になんてできないし、アプリオリにあるものでない自分と言う意思を意識しながら、目の前のフィジカルな現実に向きあって生きていくしかないんだって言う村上氏からの言葉だ。読み終わって、世界に対峙してこれからも生きて行こうと思わせる物語の力は、小説でしか達成できないものだと実感できた。