『ゴースト・イン・ザ・シェル (2017)』 IMAX3D 吹き替え版 映画 ゴーストじゃなくヨハンソンに囁いて欲しい、できれば耳元で
色々と言いたい事があるのは、わかる。
だが、『攻殻機動隊』の実写化としては、特に世界を相手にしての実写化としては良い答えだったのだと思う。
良くも悪くも独特の押井節を排し、物質的な根拠を持たない意識「人形遣い」と言う実感しづらいテーマの代わりに自己の存在の意味を、脳と機械の体と言う攻殻機動隊オリジンな設定で問いかける。
「記憶が人を作るのではなく、有り様が人を作る」と言うテーマは、義体が根幹をなす世界観のこの作品の本質としてはど真ん中のものだ。
細かい事言えば、いくらでも文句は言えるが、押井版が公開された時には原作とのギャップに文句があがり、SACの時には押井版との違いに文句が出た。
そんなもんだ。その後はそれぞれが評価され攻殻機動隊の世界を広げている。
本質と作品の世界が包括できるテーマが扱われていれば、それはオリジンの一つとして評価されれば良い。
その意味でこの作品は、十分に攻殻機動隊だ。
アイデンティティーの問題と言う点では、オリジナル版よりもさらに一歩踏み込み丁寧に扱ってすらいる。
オリジナルやイノセンスへの愛情も大小様々な形でヴィジュアル化され、単純にカットを見るだけでも嬉しい部分にも溢れている。
襲撃するスーツ達のアタッシュケースのギミックが、押井版とまったく一緒だったのにニンマリした。
ヨハンソンの表情は、世界中のどの女優よりもアンドロイドで、それでいて艶やかでセクシーだ。あの質感な顔の中で妖しげに濡れている唇は、アニメーションでは表現できないぜ。
多脚戦車の造形や、あのシーンまでしっかりと演じている彼女と監督の攻殻機動隊を映画にしようとしている意志は高く評価できる。
「私は誰だ」の答えを明確にし揺るぎないものにする存在については、あまりにもわかりやすくて個人的には残念にも感じた。
物語での行動を通して受け入れた「私」と言う存在も、揺らぎを抱えた状態で次へ続くような展開こそが、テーマの本質を深めるものだとは思うのだけれど、一本のエンターテインメント映画としてのエンディングとしてなら許容の範囲だ。
望むべくは、『イノセンス』の感想や押井版での感想でも書いたが、バトーの男のやせ我慢と想いをもう少し描いて欲しかった。
私にとって映画版の攻殻機動隊シリーズは、ある意味でバトーの素子への純愛映画でもあるから。
興行成績が世界的に振るわないのが残念だ。
バトー、トグサ、サイトウたち公安9課の連中の、大人の活躍をもっともっと大スクリーンで観たいし、タチコマ達の活躍も観たいじゃないか。